株式投資に失敗した弟が双極性障害Ⅰ型に。【体験談】
借金をして、フルレバレッジで株式投資する弟が双極性障害
私には5歳年齢の離れた弟がいます。私は結婚するまでは、両親や弟とともに実家で生活していました。
その弟が、大学を卒業して大企業に就職したものの、入社3年目にして双極性障害Ⅰ型を発症してしまったのです。
私がまだ実家にいるときの出来事でした。
弟が就職してから3年目の春になり、突然、株式投資を始めたのです。
私が弟に「なんだ、株をやるのか?」と軽い気持ちで尋ねると、弟が真顔で「兄貴見てろよ、億単位の資産家になってみせるからよ」と平然と言うのです。
典型的な大言壮語なわけですが、弟は真顔でした。しかも、インターネット証券の自分の口座残高を、自分のブログにアップするのです。
一応、自分の口座番号や氏名は隠していますが、何がきっかけで個人情報を赤の他人に知られないともかぎりません。
そこで私が「口座の画面をアップするのは、やめたほうがいいんじゃないか」と弟に注意したのですが、弟は「俺が資産家になっていくサクセスストーリーを世界の個人投資家に見せてやるんだよ」と、自信たっぷりな態度で言うのです。
このとき私は弟の様子が何か変だと思いましたが、まさか病気だとは思いませんでした。
ですから両親にも相談はしませんでした。ところが数日後、弟のブログを見てみると、証券会社の口座に現金を300万円入金し、信用取引で約900万円分の株式を買っていることに気がつきました。
私も少し株式投資をやっていますので、投資の仕組みは理解しています。
弟がフルレバレッジで株式投資をしていることに驚きました。
しかも24歳の弟に、300万円もの貯金があるとは驚きでした。
私が弟に「おまえ300万円も貯金があったのか?」と尋ねてみると、弟は「そんなにあるわけないだろ。キャッシングで金を借りたんだよ」と答えます。
そして弟は「いちいち聞いてくるなよ!」と怒るのです。
借金をして、フルレバレッジで株式投資をしているのですから、弟はおかしいのではないかと思いました。
もうしばらく様子を見ようと思って、定期的に弟のブログを見ていると、儲かったり損をしたり、なかなか口座残高は変わらないようでした。
そして、買った株の株価が上がっているときは「俺はもうすぐ資産家になる」などとかなり調子の良いことをブログに書いていて、買った株の株価が下がっているときは、かなり落ち込んで「もうダメだ。終わりだ」などと悲観的な文章をブログに書くようになっていきました。
そして、決定的な出来事が訪れました。
弟が会社を休職したのです。休職の理由が「双極性障害Ⅰ型」との診断でした。
会社の産業医による診断書に、そのように書いてありました。
一度、弟の会社の上司と人事部の社員の方2人で、自宅に来られて弟の様子を見に来てくれたとき、弟の会社での振る舞いを話してくれたのですが、私は驚きました。
気持ちが高揚して、なんでも積極的に発言し、積極的に仕事に取り組むかと思えば、弟の提案が会社で否定されたりすると会議の場で激高して上司や同僚を怒鳴りつけることがあったそうです。
上司の方は、弟が一度殴りかかってこようとしたことがあり、周囲の社員が羽交い締めにしたことがあって大変だったとおっしゃり、私は恐縮してしまいました。
当初は問題社員として扱うことにして、地方の支店に人事異動させることを検討したようなのですが、上司の方が人事部と相談した結果、精神疾患の可能性があると考えて産業医と弟を面談させたようです。
その結果、弟は「双極性障害Ⅰ型」と診断され、休職することになったのです。
上司の方の話によると、弟の態度に変化が生じたのは、会議で自分の提案をたびたび否定されるようになってからとのことでした。
上司は現実的な判断で、弟の提案を否定したのですが、弟は納得がいかなかったようです。
これが病気の発症の原因であったのです。
たしかに弟は自分の行動や意見を否定されると、激高することがたびたびありました。
いま振り返ると、あれが病気の症状だったのです。
弟はいまも神経内科に通院しており、医師からはジプレキサとエビリファイ、リーマスという薬を処方されています。
一度、会社に2週間ほど復職しましたが、再び休職してしまいました。