気分変調性障害とは?症状や診断は?【うつ病の種類】

気分変調性障害とは、ほぼ1日中持続する抑うつ気分が長期間続いてしまう慢性疾患です。
気分変調性障害は、大うつ病を併発しやすく、摂食障害や複雑性PTSD(あるいは特定不能の極度ストレス障害:DESNOS)とも重なり合うとされています。
気分変調性障害は、かつては「神経症性抑うつ」「抑うつ神経症」あるいは「抑うつ性人格」などと呼ばれていました。
そして、「病気としてのうつ病」とは少し違って、「性格的なもの」であると考えられていました。
神経症とは、精神分析の説明では、「無意識の葛藤が不安や恐怖を引き起こし、それを防衛する心理メカニズムが各症状を生じさせるもの」とされており、簡単に言うと、無意識の葛藤も防衛メカニズムもどちらも症状に関与しているという、膠着した状態のことをいいます。
しかし、SSRI、SNRIなどの新規抗うつ剤が登場し、また認知行動療法や対人関係療法など、治療効果が科学的に証明された治療法が確立されたため、それまでの「無意識の葛藤」といわれていた状態も治療で良くなることが明らかになりました。
治療可能な病気として認められるようになりました。
そのため、「抑うつ神経症」と呼ばれていた慢性のうつ病は、「気分変調症性障害」という分類の登場によって、治療可能な病気として認められるようになりました。
しかし、いまだにパーソナリティの病理なのか生物学的な疾患なのか、うつ病なのか、双極スペクトラムなのか、未だにその病態についての議論が続いています。
2013年に発表されたアメリカ精神医学会の診断基準DSM-5においては、気分変調性障害は「慢性うつ病性障害」と名称が変更されました。
それに伴い、診断基準も若干変更になり、診断基準からは、『この障害の最初の2年間は(小児や青年については1年間)、大うつ病エピソードが存在したことがない。
すなわち、障害は「大うつ病性障害、慢性」または「大うつ病性障害、部分寛解」ではうまく説明されない』と、『躁病エピソード、混合性エピソード、あるいは軽躁病エピソードがあったことはなく、また気分循環性障害の基準を満たしたこともない』とが削除されました。
そして、「(大うつ病、双極I型、II型における)大うつ病エピソード、慢性」と、およその「気分変調性障害」とが合わさったものを新たに「慢性うつ病性障害」として、双極I型、II型、双極性ではないものの区別の適応も提案されています。
気分変調性障害の症状としては、一日中気分が冴えない、軽度の抑うつ症状が2年以上続くということが特徴となっています。
気分変調性障害の患者の中には、軽度の抑うつ症状を、幼少期から10年以上も抱えていたというケースもあります。
気分変調性障害は前述の通り、長い間性格の問題として扱われ、精神疾患として治療をされないこともありましたが、もちろん、現在では他の精神疾患と同じように治療され、気分変調性障害から回復したケースも多く存在しています。
気分変調性障害は男性よりも女性に多くみられる傾向があります。
気分変調性障害は、一般人口の5~6%が患うといわれており、発症に気づかずに放っておくと、摂食障害やパニック障害を併発する可能性もあります。
気分変調性障害の症状としては、まず、気分が落ち込む、やる気が出ないといった抑うつ症状が発症します。
しかし、大うつ病と比較すると軽度のものではあります。
ただ、途中で調子の良い日があっても、慢性的に気分が落ち込んでいる状態が2年以上続いてしまいます。
次に、明け方になるまで寝付けず、昼間はぼうっとしてしまうのも気分変調性障害の症状の一つであり、また、眠れたとしてもぐっすり熟睡することができず、疲れが取れないということもあります。
次に、抑うつ症状を紛らわそうと過食になる場合と、抑うつ症状によって食欲がなくなってしまう場合があり、どちらも拒食症や過食症といった将来的な危険に繋がるので、食欲の異常が続くようであれば要注意が必要です。
また、特に疲れるようなことをしていなくても、体全体にだるさや疲れを感じるようになるため、毎日の口癖が「疲れた」「だるい」になっていたら、注意が必要です。
次に、仕事や勉強に以前より集中することができなくなり、また、仕事や自分に関わることを決断できなくなってしまいます。
これらについては、自分ではあまり自覚できない症状なので、周囲にいる人の意見も参考にする必要があります。
その他、たびたび「もう駄目だ、おしまいだ」という悲観的な考えに囚われてしまうことがありますので、ささいな失敗で必要以上に落ち込んでしまったら、一度医師や信頼できる方に相談してみることが重要です。
さらに、小さな出来事でも大きく解釈してしまい、
「自分は駄目な人間だ」
「自分がこう言ったから、あの人から嫌われたに違いない」
と、日常生活に支障が出るほど不合理な思い込みをしてしまうことがあります。
これを認知の歪みといい、この認知の歪みは自分一人でどうにかすることはできませんので専門の医師やカウンセラーの指示を仰ぎましょう。
気分変調性障害の治療には、大うつ病と同じように、疲れた心を十分に休ませる環境が必要であり、それに加え、周囲の方々が患者さん本人の気持ちに耳を傾け、理解する姿勢も重要になります。
そうした環境づくりをすることによって、患者本人が治療に前向きになるようになります。
これが、治療の一番の助けとなるということを十分に理解するようにしましょう。