双極性障害とは?症状や診断は?【うつ病の種類】
双極性障害とは、従来、躁うつ病と呼ばれていました。
この双極性障害の「双極」とは「2つの極」という意味をあらわしています。
双極性障害はうつ病の極と躁病の極の2つの極を合わせもつ、気分障害であり、うつ病相だけをもっている単極性うつ病の発生率が、約3~5%であるのに対して、双極性障害では約0.6~0.9%と少なくなっています。
その発症年齢としては、双極性では20歳代に発症のピークを迎えますが、単極性では、幅広い年齢層で発症しています。
また、単極性では、男女比が約1対2であり、女性に多くなっていますが、双極性においては、男女比は約1対1であるため、男女で発症に差はありません。
さらに、躁病相の発生が確認された場合においては、双極性障害の診断としては、それほど困難ではないのですが、うつ病相の発生だけが確認されたという場合においては、発症した中の約2~3割が双極性に転じてしまうことがあるため注意が必要です。
とくに20歳以前、あるいは20歳代において発症するうつ病では、慎重に経過をみていくことが重要となります。
I型とII型に分類することができる双極性障害
双極性障害は発生した病相によって、I型とII型に分類することができ、躁病相が中等症を超えている(I型)か、軽躁の状態であるか(II型)で分けられ、うつ病相についてはI型とII型の違いはないとされています。
日本では、うつ病の発症頻度は約7%くらいとなっており、I型、II型を合計した双極性障害の患者の割合は約0.7%くらいといわれており一見、日本では双極性障害が少ないようにみえます。
しかし、文化的、社会的な違いも大きいため、欧米と日本で本当にそれだけの差があるのか、まだ結論は出ていなく、単純計算でも、日本に数十万人の患者さんがいると見積もられています。
ただ、日本での本格的な調査のデータは少なく、はっきりしたことはわかっていません。
海外においては、うつ状態で病院に通院している患者のうち、約20~30%の患者が双極性障害だといわれています。
うつ病は一過性のものであるのに対し、双極性障害は躁状態とうつ状態の再発を何度も繰り返します。
そのため、うつ病に比べて、発症頻度が少ない割には、病院に通院している患者さんの数は多いと考えられています。
双極性障害の症状としては、まず、躁状態があります。
双極Ⅰ型障害の躁状態においては、ほとんど寝ることなく動き回り続けます。
そして、多弁になって家族や周囲の人に休む間を与えることなくしゃべり続けてしまい、家族を疲労させます。
また、仕事や勉強においては積極的に取り組むようになります。
しかし、ひとつのことに集中できないため仕事等を、何ひとつ仕上げられません。
さらに、高額な買い物をして何千万円という借金をつくってしまったり、法的な問題を引き起こしてしまう場合もあり、失敗の可能性が高いむちゃなことに次々と手を出してしまいます。
そのため、これまで築いてきた社会的信用を一気に失ったあげく、仕事をやめざるをえなくなるというケースも多くなっています。
その他、自分には超能力があるといった誇大妄想をもってしまうというケースもあります。
双極性障害の症状では、軽躁状態という症状もあり、双極II型障害の軽躁状態では、前述の躁状態のように周囲に迷惑をかけてしまうということはなく、通常時と比べてまるで別人のように元気で、短時間の睡眠でも平気で動き回ります。
そして、いつもに比べて人間関係に積極的になります。
ただ、その積極性が、少し行き過ぎのように感じる場合もあります。
躁状態と軽躁状態のそれぞれの症状において、共通していることとしては、その多くの場合において、本人は自分の症状を自覚できないということがあるので、大きなトラブルを起こしていても、患者自身はほとんど困っていません。
そのため、患者は通常時と比較して調子が良く感じているため、周囲が困惑しているという状況に気づくことができなくなっています。
双極性障害の2つの症状
双極性障害の患者が調子が悪いと自覚するのは、うつ状態の時であり、この時には、筆舌に尽くしがたい、何とも形容しがたい憂鬱な気分が終日続くという状況が続いてしまう「抑うつ気分」と、いろいろなことに興味をもてなくなり、何をしても嬉しさや楽しさを感じなくなる「興味・喜びの喪失」という2つの症状が、うつ状態の中核症状となっています。
これら2つの症状の中で、1つの症状が少なくともあり、さらに、これらを含めて、体重の増減、早朝覚醒、疲れやすい、食欲の減退または亢進、自責感、自殺念慮、やる気が出ないといった様々なうつ状態の症状のうち、5つ以上の症状が2週間以上の間、毎日出ている状態が、うつ状態となります。
双極性障害では、最初の病相から、次の病相まで、5年くらいの間隔があり、躁やうつの症状が発生していない期間においては、何の症状も発生しないため、まったく健常な状態になっています。
しかし、この期間に薬を服用しないで放置していると、そのほとんどの場合において、躁状態やうつ状態が繰り返して発症してしまい、治療がきちんと実施されていないと、躁状態やうつ状態というそれぞれの病相の間隔は短くなっていきます。
そして、最後には急速交代型へと移行していくため、そうなると薬も効きにくくなってしまいます。
双極性障害患者における離婚率・自殺率も高くなっています。
双極性障害は、患者の結婚、生活、職業に深刻な影響を招く原因となることが多くなっており、双極性障害患者における離婚率も高くなっています。
それは、健康な対照者の2~3倍とされており、さらに、自殺率も高くなっています。 双極性障害の治療方法としては単極性うつ病と同じように、薬物療法、心理療法、社会的サポートの3種類の治療法が主で実施されます。
薬物療法においては、単極性うつ病と異なり、双極性障害では、気分安定薬を中心に使用するのが原則となっています。
激しい躁状態が発生した場合には抗精神病薬を、程度の重いうつ状態が確認される場合では抗うつ薬を使用しますが、これらの薬は付加的なものです。
双極性障害では、その約6割では気分安定薬の長期使用を行うことによって、新たな病相を予防するということが可能なため、その予防を考慮した治療計画が必要となります。
双極性障害から人生を守ることができるのは、患者自身だけです。
そのため、患者自身がいかに早く主体的に再発予防に取り組み始めることができるか、それがその後の人生に大きな影響を及ぼすということを知ることがとても大切です。