運動・スポーツでうつ回復?効果・効能は?【うつ病予防&治療法】
運動習慣がうつ病・抑うつ状態の予防や改善に効果があるということが注目されてきました。
うつ病は、女性と男女ともに中年の方に多く発生し、うつ病発症の経験を持つ家族がいる方、既にうつ病の症状が複数発生している方は、うつ病になりやすいということが分かっています。
また、社会・文化的要因やストレスなどが、うつ病の発症に関して複雑に関係していると推測されていますが、多くのうつ病・抑うつ状態の原因は不明となっており、疫学的な研究においては、生活習慣もうつ病の発症に関係するということが明らかになってきました。
そのうつ病の発症に関係する生活習慣の一つに、運動習慣がないということが含まれており、さらに近年、その運動習慣がうつ病・抑うつ状態の予防や改善に効果があるということが注目されてきました。
人間は運動をすると、脳の前頭前野や海馬と呼ばれる部位の体積が増加します。
すると、脳内の血流が増え、脳由来神経栄養因子(BDNF)が増加するということが多くの研究によって明らかになりました。
これが、うつ病・抑うつ状態の予防や改善に運動が効果的であるといわれている医学的な理由です。
最近の研究では、脳の前頭前野・海馬がストレスに晒されることで委縮しBDNF低下が発生することによって、うつ病が引き起こされるのではないかと考えられており、これを神経可塑性仮説と呼んでいます。
前述の通り、運動にはBDNF増加作用があるため、このBDNF低下をうつ病の原因としている神経可塑性仮説に基づけば、運動はうつ病の改善に効果的であるといえます。
脳のBDNFが増加すると、脳の神経が活性化されることが分かっており、これによって、ノルアドレナリンやセロトニン等を分泌する神経も増え、脳内のノルアドレナリンやセロトニン等が増えることとなり、うつ病を改善させていきます。
さらに、運動によって身体に適度な疲労を与えれば、夜の睡眠が深くなります。
運動・スポーツをして疲れた日にはぐっすりと眠ることができたという経験は誰にでもあると思います。
また、うつ病患者は不眠症に悩まされていることも多くなっています。
運動によって深い睡眠をとることができれば、それだけでもうつ病の改善につながります。
さらに、うつ病患者は食欲低下の症状も多く発生します。運動を行うことによって胃腸が刺激されれば、食欲が改善しやすくなります。
ただ、うつ病の予防・改善のために運動・スポーツを始めるのであれば、十分に検討してから始めるようにしましょう。
具体的には、定期的に行えるスポーツであること、一度の失敗が尾を引くようなスポーツではないこと等を考えて始めることが重要です。
もし、例えばマリンスポーツを選んでしまうと、夏場しか行えることができないということがあり、継続して行うということができません。
また、マイナーなスポーツを選んでしまうと、競技人口が少ないため、そのスポーツを行える場所や時期が限定されてしまう可能性があり、これも継続して行うことが難しくなります。
もし、野球やサッカー等を選んだ場合、運動量が多いという点はうつ病に効果的ですが、スポーツを行うにあたってある程度の技量が必要となり、初心者と経験者に技量の違いがはっきりと出てしまいます。
しかも、小さなミスが勝敗を分けるということもよくあるため、このような競技スポーツはストレス解消どころか、逆にストレスを溜めてしまうという結果になることもあります。
したがって、うつ病の予防・改善のために運動・スポーツを始めるのであれば、例えば、バッティングセンターやジョギング、ゴルフ練習場での打ちっぱなしといったものはどうでしょうか。
このような、他者との競い合いが無く、かつ達成感を得ることができる運動・スポーツを選ぶのが良いと思います。