大うつ病性障害とは?症状や診断は?【うつ病の種類】

大うつ病性障害とは、うつ病性障害のひとつで、最もよくみられるタイプのうつ病となっています。
大うつ病性障害だと診断される基準には、「大うつ病エピソードを満たしていること」が挙げられ、アメリカ精神医学会が発行しているDSM(精神障害の診断と統計マニュアル)においては、大うつ病エピソードの診断基準として、9つの症状が定められています。
抑うつ気分と興味・喜びの喪失は必須症状となっており、最低どちらか1つが認められる必要があり、これを満たした上で、残りの7つの症状のうち、5つ以上が認められるようになると、大うつ病性障害だと診断されます。ただし、気分が病的に高まる躁病エピソードや、程度がやや軽い軽躁病エピソード、あるいは躁とうつが混在している混合性エピソードがみられた場合には、大うつ病性障害とは認められず、また、大うつ病性障害のなかにも単一エピソードと反復性の2種類が存在していて、それぞれ大うつ病エピソードが存在している数によって分類されています。
大うつ病性障害の症状としては、まず、抑うつ状態や興味・喜びの喪失があります。
これらは大うつ病エピソードの最たるもので、基本的な症状となっており、抑うつ状態は、憂うつや空虚な気分、不快感など、マイナスな感情が表れている状態のことをいいます。
興味・喜びの喪失においては、今まで楽しんでいたものに興味がもてなくなる、好奇心がなくなる、性的関心が希薄になるなどの症状があげられ、これらの症状は朝から日中にかけて表れることが多く、また2週間以上続くようになります。
次の症状としては、焦りと感情の抑制があります。
これらは一見正反対の反応にみえますが、大うつ病性障害ではこのどちらもみられるようになり、一方だけが表れたり交互に表れたり、同時に表れたりとそのパターンはさまざまです。
しかし、ほとんど毎日こういった症状があり、焦りにおいては足踏みをしたりじっと座っていられなかったり、髪をかきむしったりといった行動がみられます。
思考制止においては、考えが浮かんでこなかったりまとまらなかったり、無口になったりといった症状がみられるようになります。
次の症状としては、平常時では考えられない極端な思考があらわれることがあります。
自分に対する無価値観や悲観的な思考、罪責感などは、健康な人でも少なからず感じることはあると思いますが、大うつ病性障害にかかった場合には、こういった思考が病的なほどに激しくなってしまいます。
そして、毎日無価値感を覚えたり必要のない罪責感、強い劣等感に苛まれるようになります。
次に、「死にたい」と思う気持ちが強くなる症状があります。
自殺願望や希死念慮といった、死にたいと思う気持ちが強くなるのも大うつ病性障害の特徴となっています。
自分が周りに迷惑をかけている、生きていても意味が無いといった思考から、こういった考えが生まれることが多くなります。
そして、実際に自殺の計画を練って具体的な準備を進めるなど、自殺企図にまで発展するということもあります。
また、睡眠障害や体の痛みといった症状があらわれることもあります。
大うつ病性障害は心の病気ですが、睡眠障害や体の痛みのように、体的な症状が表れることもあり、睡眠障害では、寝入りが悪くなる入眠障害、ちょっとした物音でも目が覚めてしまう中途覚醒、ごく短時間で目が覚めてしまう早朝覚醒、十分な睡眠を取ったはずなのに日中に眠くなってしまう過眠障害などがあらわれることがあります。
体の痛みは頭や肩、腰、背中、手足など全身に表れることがあり、また、痛みとまではいかないまでも、倦怠感やしびれ、食欲不振といった症状も表れることがあります。
ただ、日本のうつ病の診療ガイドラインは、うつ病と、DSM-IVの大うつ病性障害、また単極型(短極性)うつ病はほぼ同じ意味であるとしています。
実は「大うつ病」というのは、普通の「うつ病」のことであり、「うつ病=大うつ病性障害」であり、全く同じ意味になります。
ではなぜ、単にうつ病と言わず、わざわざ「大」をつけて大うつ病と言うようになったのか
実は、医学英語を和訳したときについてしまったようです。
うつ病は、英語では、一般的に「Depression」ですが、アメリカ精神医学会が発刊しているDSM-Ⅴという診断基準には、正式名称として「Major Depressive Disorder」と記載されています。
この「Major」を和訳するとき、かつての偉い日本の先生方が「大」と訳したため、「大うつ病性障害」となったようなのです。
一般的に、「うつ」という言葉からイメージされる症状や病態は、この大うつ病性障害に基づくものとなっており、これまでに経験したことがない人はどこか他人事のように思うかもしれません。
しかし、若年層から中高年まで幅広くかかることのある病気であるため、油断することはできない病気です。
気分が落ち込んでしまったり、何も考えたくなくなったり、死にたいと思うことは誰にでもありますが、もしこういった状態が長期にわたって続いているのであれば、大うつ病性障害の可能性も視野に入れて、精神科や心療内科、カウンセリングなどを受診するようにしましょう。